海外居住権

日本を好きだからこそ、「枠」の外に出る。――ウルグアイに学ぶ、これからの資産と居住権のあり方

先日、私はウルグアイ~ブラジル~コロンビア~エルサルバドルを旅する機会がありました。ウルグアイに約10日間、そこから、サンパウロ(ブラジル)とボゴタ(コロンビア)を経て、エルサルバドルに4日滞在をしました。

南米屈指のリゾート地ウルグアイのプンタ・デル・エステ

(写真:南米屈指のリゾート地、プンタ・デル・エステ(ウルグアイ))

エルサルバドルの首都、サンサルバドルでは、日本の衆議院議員選挙の在外投票を行いました。

在外投票用紙

(写真:エルサルバドルで使った在外投票用紙を入れる封書)

エルサルバドルは、ビットコインを世界で初めて法定通貨に採用した国として知られています。今回私がこの国を訪れたのは、ビットコインの国際会議「Plan B Forum」に参加するためでした。

エルサルバドルのPlan B Forum

(写真:エルサルバドルで開催されたPlan B Forum)

普段私たちが使う日本円や米ドルは、国家や中央銀行が発行に深く関与しますが、ビットコインはそれらとは真逆の、発行主体の存在しない「インターネット上のお金」です。

2019年に大統領に就任したナジブ・ブケレ氏(現大統領、2019年~現在)は、この国家に依存しない「インターネット上のお金」であるビットコインを法定通貨に採用しました。

国家に依存しないお金を、国家が採用する、という一見矛盾する政策には背景があります。

エルサルバドルは2001年に自国通貨コロンを捨てて米ドルを導入し、今やスーパーの買い物もすべて米ドルです。

ブケレ大統領がビットコインという「実験」に踏み切ったのは、国の限界を認め、通貨のコントロールを米国(米ドル)に委ねざるを得ないという「諦め」と、だからこそ国家の枠組みに依存しない新しい決済手段に賭けたいという「挑戦」が同居しているように感じました。

エルサルバドルの価格表示は米ドル

(写真:米ドルで表示されている、エルサルバドルのスーパーマーケットの値札)

そんなエルサルバドルにいながら、私は日本の未来を決める一票を投じました。

ウルグアイからエルサルバドルまで、日本語を話す機会が少なかったこともあり、大使館で日本語のやり取りをした時はどこかホッとした気持ちになりました。

在外投票を担当している大使館の方に

「観光でいらっしゃったのですか?」

と聞かれたのに対して、

「ビットコインの世界は、皆様が代表をされているような「国家」とか、日本銀行が発行する「日本円」とは真逆の世界のお金ですが、今後、インフレでお金の価値が減ることに人々が対抗していくための資産になっていくと信じてます!」

なんて、大使館員に対してついつい熱弁をふるってしまいました。

そしてどこに投票をしようかなと思案を巡らせているときに、改めて強く思いました。「自分は、日本という国がなんだかんだ言っても好きなんだな」と。

でも、同時にこうも考えたのです。もし万が一、日本というシステムが今の形を維持できなくなったとしたら?

その時、日本を外側からでも支えていくことができるのだろうか?

エルサルバドルに来る前にウルグアイによっていなかったら、このような思考になることはなかったかもしれません。

なぜそう考えるようになったのか。

今回は、2026年1月に訪れた「南米の優等生・ウルグアイ」での体験を交えながら、私が確信している「日本に住みながら海外居住権を持つ意味」についてお話しします。


「安全」なウルグアイ

モンテビデオに到着した初日。海岸に近い小さなレストランで一人ランチをしていた時のことです。オーナーと思われる女性と話すと、彼女は意外なことを口にしました。

「この国は安全で、教育もちゃんとしている。だから移住してきたの。物価は高いけれど、それだけの価値があるわ」

彼女はウルグアイ人ではなく、ブラジル人でした。隣国の大国から「安全と教育」を求めてやってきたのです。

南米と言えば治安が悪い、と身構えて乗り込んだだけに、ウルグアイの初日からとても大きな衝撃を受けました。

ウルグアイの首都モンテビデオの海岸とマリーナ

(写真:ウルグアイの首都モンテビデオの海岸とマリーナ)

モンテビデオの街を歩いて本当に驚いたのは、警察官の姿をほとんど見かけないことでした。

隣国ブラジルのサンパウロでは、銃を持った警備員が日常の景色ですし、今回立ち寄ったコロンビアの首都ボゴタには街中にグラフィティ(貧困層や治安が悪いところに特に多いスプレーの落書き)があふれていますが、ここでは違います。

実際、外国人居住者が多いプンタ・カレータス地区などは、警察がいないのに、夜の一人歩きも全く不安を感じないほど安全です。

グラフィティだらけのコロンビアの首都ボゴタの街頭

(写真:グラフィティだらけのコロンビアの首都ボゴタの街頭)

どうして警察がいないのに安全なのか?街中で警察官だらけのサンパウロでは力による統治が肌で感じられたのに対して、ウルグアイのモンテビデオは、社会そのものが安全だなと感じさせる何かがありました。それは何なのか?が今回の私の南米の旅の大きなテーマになりました。

モンテビデオのプンタ・カレータス地区

(写真:危険を感じさせない、ウルグアイの首都モンテビデオのプンタ・カレータス地区)

(動画:ウルグアイの首都モンテビデオのポシートス地区)


「小国」ウルグアイってどんな国?

ウルグアイは人口約340万人(京都都市圏の人口と同じくらい)。面積は日本の約半分という小国です。

19世紀、大国ブラジルとアルゼンチンが3年にわたる激しい戦争を繰り広げた末、イギリスの仲介によって「緩衝地帯」として人工的に切り出されたのがこの国の始まりです。

ウルグアイの地図。ブラジルとアルゼンチンの二大国の間にある。

(写真:「大国」ブラジルとアルゼンチンに挟まれた「小国」ウルグアイ)

ウルグアイ人と話すと、二言目には

「わが国は小国ですから」

という言葉が出てきます。

彼らは最初から「自分たちは大国に挟まれた小国である」という現実を直視し、だからこそ生き残るための「賢い知恵」を磨いてきました。これは、アメリカや中国という「大国」のはざまで揺れる日本にとっても、とても大事なことだと思いました。

この「小国の賢い知恵」とは何なのか?


小国の知恵①:「社会の安定」を支える社会保障(年金・健康保険)民主主義

中南米といえば「治安が悪い」というイメージがつきまといますが、その最大の要因は貧困、そして貧困層が社会から完全に見放された時に生じる「絶望感」にあると言われています。

今回訪問したブラジルのサンパウロでは、市内の目抜き通りであるパウリスタ通りに、ほぼ100メートルおきにパトカーや武装警官が配置されていました。いわば「警察の力」で力技の治安維持を行っているのが大国の現実です。

サンパウロのパウリスタ通り。警察官が多数配置されている。

(写真:ブラジル・サンパウロの目抜き通り「パウリスタ通り」ほぼ100メートルごとに警察官が配置されている。)

対照的に、ウルグアイのモンテビデオの外国人の多い居住区では、警察官の姿を一度も見かけることはありませんでした。この圧倒的な治安の良さはどこから来るのか。その背景を探ると、社会の弱者を見捨てない「社会保障の仕組み」に突き当たります。

中南米で最も格差が小さい国

ウルグアイは20世紀初頭から、教育の無償化(大学まで)や8時間労働制、失業保険など、欧州諸国よりも早く高度な社会政策を導入してきました。その結果、現在でも中南米諸国の中で所得格差が最も低い国の一つとなっています。

一方、隣国の「大国」アルゼンチンでは、過去に政府が個人の年金資産を強権的に没収するという事件が起き、公的制度への信頼が崩壊しました。ブラジルでも、社会から見放された層の絶望感がギャングを生む土壌となっています。ウルグアイには、低所得者層から富裕層までがこの「国の仕組み」を信頼しているという、社会の安定の基礎があるのです。

痛みを伴う改革を成し遂げる民主主義

さらに驚くべきは、この社会保障を持続させるための「政治の実行力」です。 近年のウルグアイは、日本と同様に少子高齢化という課題に直面しています。しかし、選挙を恐れて改革を先送りにしがちな日本とは対照的に、ウルグアイの政治家は国民に対して「このままでは制度が立ち行かなくなる」と正面から説明しました。

2年という歳月をかけて国民と丁寧に対話を重ね、年金支給開始年齢の引き上げなどの痛みを伴う改革を民主的に成し遂げたのです。この姿勢は国際的にも高く評価され、主要格付け会社から過去最高の評価を獲得するに至っています。

制度への信頼こそが「安全」の正体

ウルグアイで働く場合、年金や健康保険への加入は厳格に義務付けられています。

  • 健康保険(ミューチュアリスタ): 従業員は自ら選んだ私立病院ネットワークなどの組織に加入し、給料天引きで質の高い医療を受けられます。
  • 公的セーフティネット: 低所得者は公立病院で無償、あるいは低価格で一定水準の医療が保障されています。

「困った時には制度が守ってくれる」という安心感。この制度(年金・健康保険)への信頼が社会の安定を生んでいる点は、実は日本とも共通する強みです。


小国の知恵②:米ドルとウルグアイ・ペソの二重通貨体制と外貨取引の自由

一方で、彼らは「国家」を妄信していません。 街中のATMでは米ドルが引き出せ、不動産や車などの高額取引はすべて米ドル。人々は日々の買い物にはペソを使いますが、資産はドルで持ちます。

モンテビデオのスーパーの価格表示。ウルグアイ・ペソ建て。

(写真:ウルグアイのスーパーの棚はウルグアイ・ペソ(習慣的に$マークがついているが、ウルグアイ・ペソ建て)。1ウルグアイペソ=約4円(2026年1月現在)、野菜酢漬けの瓶詰が約800円なので、物価は安くない。)

モンテビデオの不動産広告。米ドル建て。

(写真:不動産の広告。米ドル(US$)建てで表示されている。407㎡のマンションが約200万米ドル。)

なぜ、このような二重通貨体制になったのでしょうか?

過去、「小国」ウルグアイの経済は、隣の2つの大国、アルゼンチンやブラジルの金融・経済危機のあおり受けています。それも1度や2度ではなく、何度も受けているのです。

21世紀に入ってからも、2002年にアルゼンチンの経済危機とブラジルの通貨安をきっかけに、アルゼンチン人が米ドルの引き出しをするためにウルグアイの銀行に殺到し、ウルグアイの銀行が破綻してしまいました。

モンテビデオ市内にある「ガウチョと通貨の博物館(Museo del Gaucho y la Moneda)」の展示に象徴的な展示がありました。

19世紀にアルゼンチンのハイパーインフレに苦しむ、(当時はアルゼンチンの一部だった)ウルグアイのガウチョ(牧畜に従事していたスペイン人と先住民の混血の「カウボーイ」)が、アルゼンチンの発行した紙幣をタバコの巻紙として使っていたことを示す吸い殻が展示されていたのです。

ガウチョと通貨の博物館の展示。タバコの巻紙にされたアルゼンチンの紙幣。

(写真:モンテビデオ市内の「ガウチョと貨幣の博物館」の吸い殻の展示。巻紙に価値の無いアルゼンチンの紙幣が使われている。説明の日本語訳「『良質』な通貨を重んじた東方州(現在のウルグアイ)の人々は、ブエノスアイレスが発行した『約束(紙幣)』を信用せず、これら初期の紙幣をタバコの巻き紙として使ったほどでした。」)

自由な外貨取引

日常の買い物はウルグアイ・ペソで取引、不動産のような資産は米ドルで取引がされる二重通貨体制のウルグアイですが、ウルグアイの「小国」としての知恵の一つが、外貨の取引に制限をかけなかったことです。街中でもあちこちに両替所があります。

ウルグアイの両替店の看板

(写真:ウルグアイの両替所の看板。アルゼンチンペソのレートに注目!)

隣国アルゼンチンでは、自国の米ドル等の外貨の流出を防ぐために、アルゼンチン・ペソから米ドルへの交換に厳しい制限を設けています。外貨取引を制限したアルゼンチンでは、公定レートと闇レートの2つのレートが併存することになりました。

これにより、まともに商売をする人が損をし、資産が政府に吸い上げられるという経済の歪みが常態化しています。ウルグアイが外貨取引を完全に自由にしているのは、こうした『嘘』が国を滅ぼすことを、隣国の失敗から痛烈に学んでいるからなのです。

ウルグアイは外貨取引を完全に自由にしたのはよいが、ではどうやって、外貨が流出しないようにするのか?そこにも「小国の知恵」がありました。外貨取引を制限して、外貨を無理に縛り付けるのではなく、企業、投資家や市民から「選ばれる国」になる道を選んだのです。


小国の知恵③:「量より質」の輸出産業(農畜産業、IT産業)の重視

企業、投資家や市民から「選ばれる国」になるためにどのような知恵を働かせたのか?ウルグアイがやったことは当たり前のことを当たり前実行することです。それはモノやサービスの輸出で外貨を稼ぐことです。

プレミアム・ビーフ化の推進と輸出振興

例えば牛肉。巨大なアルゼンチンに対し、ウルグアイは全頭をデータベースで管理し、QRコードで「誰が、どこで育てたか」を確認できるトレーサビリティを世界で初めて義務化しました。

(動画:モンテビデオの台所「メルカド・デル・プエルト」で食べるアサード(炭火焼き肉))

そして、「小国」ウルグアイが「大国」アルゼンチンと違うのは、輸出を制限しないことです。アルゼンチンは、ポピュリスト的な政治家が「国民の食糧確保を優先する」という名目のもとに牛肉の輸出企業に重税をかけたりするのとは対照的に、輸出に制限をかけることをせず、むしろ輸出を優先させているくらいです。

アルゼンチンのように、輸出を制限すれば、これまで牛肉を買ってくれていた企業からの信用を失う。その失った信用を取り戻すには長い年月を必要とすることを知っている「小国ならではの知恵」がここでも生きています。

IT教育とIT企業の誘致

IT分野でも、1人1台のPCを無償配布する「セイバル・プラン」により、高度なIT人材を育成しています。

  • フリーゾーン(自由貿易地域)政策: ゾナメリカ等の特区では法人税や消費税が免除。
  • IT輸出への免税: 国外向けソフトウェア開発に対する所得税を100%免除。 その結果、ソフトウェアの1人当たり輸出額は南米1位。ナスダックに上場するユニコーン企業(dLocal)も誕生しています。

また、ウルグアイは、IT企業の誘致にも力を入れています。2023年には、マイクロソフトは上海(中国)、ミュンヘン(ドイツ)につづいて、モンテビデオにAI共同イノベーション・ラボを設立しました。JETRO「米マイクロソフト、中南米初の人工知能ラボをウルグアイに開設(2023年09月21日)

ちゃんと外貨を稼いで、ちゃんと経済を回す、当たり前のことを当たり前にやっているのがウルグアイなのです。


小国の知恵④:外国に移住したウルグアイ人の活用

ウルグアイの学ぶべき点として最後に挙げたいのは、国外に住む自国民を「国を捨てた裏切り者」ではなく、世界中に散らばる「アンバサダー(大使)」として戦略的に活用している点です。

象徴的なのが、国家研究イノベーション庁(ANII)などが進める「グローバル・タレント・ネットワーク」の構築です。かつての経済危機で国外へ渡った優秀なエンジニアや起業家たちをデータベース化し、国内のスタートアップとマッチングさせる「ビンクラシオン(Vinculación、絆)」の政策を推進しています。

外国に移住した起業家やエンジニアが外側で培った最先端の知見や資本、そしてグローバルな人脈が、今のウルグアイのIT立国としての発展を力強く支える仕組みを作ったのです。

人材の海外への移住を「頭脳流出」と嘆くのではなく、デジタル時代のウルグアイの経済を支えるネットワークとして再定義する。この合理的な知恵こそが、小国ウルグアイの真骨頂と言えます。


まとめ:「魅力的な国であり続ければ、人は物理的な距離を超えて貢献し、いつか必ず戻ってくる」

ウルグアイの歴史と現状を見てきて、私が強く感じたのは「国家を信頼しつつも、自立して自分を守る」という彼らのしなやかな強さです。

どんなに素晴らしい国であっても、時代が変わればシステムが揺らぐこともある。それは、アルゼンチンの危機や2002年の金融危機を経験したウルグアイの歴史が示しています。その現実を歴史から痛烈に学んでいるからこそ、彼らは「日常はペソ、資産はドル」という二段構えの生活を当たり前に送っています。

この「小国の知恵」を、私たち日本人が現代のグローバル社会で応用するならどうすべきか。その答えとして私が行き着いたのが、以下の「三位一体」の資産防衛術です。

三位一体の防衛術

  1. 海外法人/信託:資産を法的に守る「分身」を持つ。
    自分という個人とは別に海外法人/信託を活用して、一国の制度変更に左右されない強固な基盤を作ります。
  2. 海外居住権:いざという時の物理的な足場、そして人生を謳歌する「第2の拠点」。
    居住権を持つということは、単なるリスクへの備えではありません。
    海外居住権を得ることで、日本ではアクセスできない投資機会を手に入れたり、バケーションを楽しんだり、子供に国際感覚をもってもらう教育をさせたりする、「もう一つの拠点」を手に入れることができます。
    居住権の分散は地政学リスクが高まる今の賢い選択肢です。
  3. ビットコイン/バージン・コイン:特定の国に依存せず、誰にも監視されない資産の構築。
    国家の枠組みを超えた価値の保存手段を持つことは、究極の「個人の自由」に繋がります。
三位一体の資産防衛
海外法人/信託
居住権分散
ビットコイン採掘

日本という「母港」を支え続けるために

日本を好きだからこそ、特定のシステムが揺らいだ時に共倒れにならない備えとなるのがこの三位一体の資産防衛です。

自分自身が安定した基盤を持っているからこそ、在外投票を通じて日本の未来に一票を投じることもできれば、日本のビジネスを外側から支援し続けることもできる。

かつて、在外投票の仕組みを辛抱強く訴えかけ、勝ち取ってくれた先人たちがいました。その想いに感謝しつつ、私は「どこにいても日本を支えられる日本人」であり続けたいと思います。

日本という素晴らしい『母港』を持ちながら、世界にもう一つの『港』を築いておく。

それは、自分と家族を守るためだけでなく、結果として日本という国を、外側から力強く支え続けていくことにつながると信じています。

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