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【第3回】なぜ警察が少ないのに安全なのか?|ウルグアイの社会保障

(写真:グラフィティだらけのコロンビアの首都ボゴタの街頭)

中南米といえば「治安が悪い」というイメージがつきまといますが、その背景には、貧困と格差、そして貧困層が社会から完全に見放された時に生じる「絶望感」にあると言われています。

今回訪問したブラジルのサンパウロでは、市内の目抜き通りであるパウリスタ通りに、ほぼ100メートルおきにパトカーや武装警官が配置されていました。いわば「警察の力」で力技の治安維持を行っているのが大都市サンパウロです。

サンパウロのパウリスタ通り。警察官が多数配置されている。

(写真:ブラジル・サンパウロの目抜き通り「パウリスタ通り」ほぼ100メートルごとに警察官が配置されている。)

対照的に、ウルグアイのモンテビデオの外国人の多い居住区では、警察官の姿を一度も見かけることはありませんでした。この圧倒的な治安の良さはどこから来るのか。

その背景を探ると、社会の弱者を見捨てない「社会保障の仕組み」に突き当たります。

中南米で最も格差が小さい国の一つ

ウルグアイは20世紀初頭から、教育の無償化(大学まで)や8時間労働制、失業保険など、先進的な社会政策を導入してきました。その結果、現在でも中南米諸国の中で所得格差が最も低い国の一つとなっています。

一方、隣国の「大国」アルゼンチンでは、過去に政府が民間年金制度を国有化し、個人の積立資産を実質的に没収するという事件が起きました。公的制度への信頼が崩壊した社会では、人々は自助・自衛に向かわざるを得ません。ブラジルでも、社会から見放された層の絶望感がギャングを生む土壌となっています。

ウルグアイには、低所得者層から富裕層までがこの「国の仕組み」を信頼しているという、社会の安定の基礎があるのです。

痛みを伴う改革を成し遂げる民主主義

さらに驚くべきは、この社会保障を持続させるための「政治の実行力」です。 近年のウルグアイは、日本と同様に少子高齢化という課題に直面しています。しかし、選挙を恐れて改革を先送りにしがちな日本とは対照的に、ウルグアイの政治家は国民に対して「このままでは制度が立ち行かなくなる」と正面から説明しました。

約3年という歳月をかけて国民と丁寧に対話を重ね、年金支給開始年齢の引き上げなどの痛みを伴う改革を民主的に成し遂げたのです。この姿勢は国際的にも高く評価され、主要格付け会社から過去最高の評価を獲得するに至っています。

制度への信頼こそが「安全」の正体

ウルグアイで働く場合、年金や健康保険への加入は厳格に義務付けられています。

(写真:ウルグアイの高級リゾート地プンタ・デル・エステの私立病院であるマウトネ病院。一般の市民も公的医療保険を通じてアクセスが可能となっている。)

公的医療保険: 給与を受け取る一般市民は自ら選んだ私立病院ネットワークが組織する健康保険組合のような組織(ミューチュアリスタに加入し、給料天引きで質の高い医療を受けられます。

公的セーフティネット: 低所得者は公立病院で無償、あるいは低価格で一定水準の医療が保障されています。

「困った時には制度が守ってくれる」という安心感。この制度(年金・健康保険)への信頼が社会の安定を生んでいる点は、実は日本とも共通する強みです。

しかし、小国ウルグアイの「賢い知恵」は、社会保障だけではありません。

その賢い知恵のヒントは、町中やショッピングモールにある両替店、現地で食べた伝統的なアサード(牛肉の炭火焼)にヒントがありました。

次回は、「買い物ではペソ、資産はドル」というウルグアイ人の現実的な知恵についてお話しします。

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